今回のタイトルは
「血液培養は『陰性』であることを喜ぶための検査である」
ですが、このありがたいお言葉は、さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ作者が尊敬している某大学病院感染制御の偉い先生からお聞きしたものです。(決してブログ作者が思いついた言葉ではありません・・・)
先日開催された、さいたま赤十字病院の院内感染対策勉強会で”5分間”お話させて頂く時間をいただきましたので、上記メッセージを中心にお話させていただきました。
実は感染制御担当部長からは「5分間で血培のコンタミネーションを少なくするような方法論について」話すようにいわれていたのですが、そもそもなぜコンタミネーションが「罪」となるのか?についての理解がなければ、いくら「消毒しっかり」とかいっても意味がないと判断して上記のお話をさせていただきました。
なぜ「血液培養は『陰性』であることを喜ぶ検査」であるのか?
これがわかっていらっしゃる皆様は、この後は読まなくてよいかもしれません。
もし、”?”と思われている皆様はもう少しお付き合いください。
なんで「血液培養」検査をするんでしょうか?
それは「『菌血症』でないことを証明するため」であるとブログ作者は考えております。
感染症というのは、どこかの臓器・部位に「感染病巣」を形成いたします。
その「感染病巣」のみに病原体がとどまっているのか?それとも、感染病巣から病原体が血流にでてしまい、「菌血症」の状態になってしまっているのか?
その見極めのために「血液培養」検査は行うのです。
「悪性腫瘍」に例えてみると?
「感染病巣」=「原発巣」
「血液培養検査」=「転移病変の検索」
とでもいえるでしょうか?
もし、「感染病巣」に病原体がとどまらずに、「菌血症」の状態となっていたら・・・病原体が血流に乗って全身の臓器に感染病巣を形成してしまっている可能性につきい十分に注意する必要がでてくるかもしれません。
場合によっては、「転移病巣」に相当する「感染病巣」が先にみつかって、「原発巣」に相当する「初感染病巣」が後に判明するなんてことも珍しくありません。
たとえば、「ブドウ球菌による脊椎炎」が先にみつかって、血液培養でも「ブドウ球菌」が検出。後に初感染病巣であった、「感染性心内膜炎」が判明した・・・なんてこともそれなりにありうるのです。
血液培養検査の目的が「『菌血症』でないことの証明」のためである以上、「血液培養陽性」という結果はあまり喜ばしい結果ではないことになります。
だから、万が一「血液培養陽性」となって、感染病巣がはっきりしていなかったりしたら、それこそ「必死」で感染病巣を検索する必要があります。
また、血液培養は「陰性」であることを喜ぶための検査であるわけですから、万が一「陽性」となった場合には、かならず「血液培養陰性化」を確認して「喜ぶ」ことをしなくてはなりませんね。
この、「血液培養再検」→「血液培養陰性化の確認」がきちんとされているかどうか?はその医療機関がしっかりと「感染症診療できているかどうか?」のひとつの指標になるのではないか?とさいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ作者は考えております。
「まず『血液培養採取』する」までは、結構な数の医療機関・医療従事者が行っているような時代になりつつありますが、まだまだ「陽性」となった「血液培養」検査の「再検」をおこなって、「血培陰性化」をきちんと確認されている医療機関・医療従事者の皆様は少ないのではないか?と推定いたしております。
さいたま赤十字病院で、最近血液培養が再増加しているのは、ここの「血液培養陰性化チェック」の徹底を図っているからではないか?と考えております。
「血液培養陽性」患者さんの治療で抗菌化学療法が「効いている」かどうかの一番の判断材料が「血液培養陰性化」の確認です。
決して”CRP"値の低下ではありませんので、皆様よろしくお願いいたします。
さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ読者の皆様は
「血液培養は『陰性』であることを『確認』して喜ぶ経験」をしているでしょうか?
(長くなったので、「コンタミネーション」のお話はまた日をあらためて・・・)
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