2010年9月30日木曜日

ありがとうございました

2006年10月にさいたま赤十字病院呼吸器内科の公式ブログとしてはじめさせていただきました、

「さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ」

ですが、初代作者権管理人は本日を持って引退させていただきます。

約4年間の長い間、ブログ読者の皆様には大変お世話になりました。

さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログの目標は?

①さいたま赤十字病院の知名度・認知度を上げること

②一般の方々に呼吸器疾患・感染症疾患の情報を提供すること

③医療系学生、研修医、初学者の皆様に、いろいろな勉強会などの情報を提供すること

④さいたま赤十字病院を初期研修先として候補に入れて頂けるようになること

⑤さいたま赤十字病院呼吸器内科の知名度・認知度を上げて、呼吸器内科医をめざす皆様に多数見学にきていただくこと

などを目標としておりました。

どれだけ目標を達成できたのかは、さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ読者の皆様のご評価次第かと思います。

ブログ作者・管理人としてはさいたま赤十字病院に多数の見学者がいらしてくださったり、初期研修医のマッチングでの応募者増加などそれなりの効果はあったのではないかと思っております。

また、呼吸器内科に来院して頂ける患者さんの中に、「ブログ見て来ました!」と言ってくださる方々がいらしたりと、こちらもそれなりの知名度・認知度上昇に貢献できたのかな?と思っております。

今後、私の後を引き継いでブログ継続してくれるスタッフが見つかりましたらその方に本ブログを託そうかと思っております(それまでの間はたまに現れる予定です)

さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログをご愛読いただきまして大変ありがとうございました。

これからも「さいたま赤十字病院呼吸器内科」を暖かい目で見守って頂けましたら幸いです。

2010年9月15日水曜日

希望するすべての子供に予防接種を!キャンペーン

日本医師会が、素晴らしキャンペーンをやっているみたいです。

「希望するすべての子供に予防接種を!キャンペーン」

日本感染症学会公式WEB SITEに署名協力のお願いが掲載されております。

http://www.kansensho.or.jp/news/gakkai/100913yobou.html
(上記URLで日本感染症学会WEB SITEにつながります)



ご賛同いただける皆様は是非、署名にご協力ください!

多剤耐性菌を正しく理解するためのQ&A~日本感染症学会

日本感染症学会の中の先生方がいろいろと頑張っておられます。

「一般の方へ情報提供:多剤耐性菌を正しく理解するためのQ&A」
http://www.kansensho.or.jp/topics/100913publicqa.html
(上記URLで日本感染症学会WEB SITEに接続いたします)

が日本感染症学会公式WEB SITEに掲載されておりました。


著者の署名入りで、一般市民の皆様むけに説明が詳細にされているかと思います。

以下WEB SITEからの引用です。

「はじめに」
最近、報道が続いている多剤耐性菌の感染事例を受けて、日本感染症学会では一般の方向けに情報提供をさせていただきます。多くの耐性菌の名前が出て、死亡例も報告されていることから、多くの方々は混乱や不安をお感じのことと思います。ただし大切なことは、正しい知識を持って対応することであり、不必要に恐れたり、過剰な反応を示さないことです。耐性菌に関する状況はこれからも変化する可能性はありますが、現在の状況と今後の対応を踏まえて、Q&A形式で解説を加えさせて頂きます。なお、個々の多剤耐性菌の解説は本学会ホームページの該当する項目をご参照ください。」


大事なので、以下も引用させていただきます。

Q:多剤耐性菌による院内感染は病院の責任なのでしょうか?
A:多くのマスコミは多剤耐性菌による院内感染が起った場合、病院側の医療ミスという前提で報道されるパターンが多いと思われます。ただし“院内感染”という言葉のとらえ方自体が医療関係者と一般の方々とではもともと異なっているので、まずはその違いを明確にしなければいけません。“院内感染”の一般的な定義は、入院後48時間以降に起こった感染、というものであり、何らかの病気を持った方が入院後に起こした感染というとらえ方を医療関係者はしています。院内感染の原因となった菌は、入院後に病院内で感染した場合もありますが、患者さん自身が菌を保菌した状態で入院してこられる場合もあります。つまり入院後に多剤耐性菌による感染症が起こったとしても、全てが病院内で新たに感染したとは限らないのです。また医療行為を行う上で、感染症のリスクが高まることは避けられないことですので、入院後に起こるいわゆる“院内感染”はどんなにがんばってもゼロにすることはできません。
 ただしごくまれにしか分離されない多剤耐性菌による感染者がひとつの病院内で多数発生した場合、感染者が全員保菌状態で入院してくる確率は頻度的にかなり低くなりますので、このような事例では病院内で多剤耐性菌が広がってしまった可能性が高くなります。院内での多剤耐性菌の流行(アウトブレイク)が起こらないように医療機関では常に感染防止策の徹底を心がける必要があります。しかしたとえ十分と思われるレベルの感染防止策を実施していたとしても、目に見えず、何ら症状を示さない多剤耐性菌による院内での流行は完全に防げるわけではありません。もし不幸にして院内での流行が発生してしまった場合には、病院としてどのように耐性菌による感染防止策に取り組んでいたのかを検証し、問題点が指摘されればすぐに改善する必要があります。


以上引用させていただきました。
「”院内感染”はどんなに頑張っても「ゼロ」にすることはできません」


と上記引用文にも記載されております。
ただし、院内感染症のリスクをある程度低減することは可能と考え、少し前にCDC 12STEPSをご紹介させていただきました。
耐性菌問題は「患者」⇔「医療従事者」双方の努力なしでは解決できないかと思います。
なんらかの理由で、病院・医療機関に長く「入院」「通院」することそのものが耐性菌暴露のリスクとなるものとブログ作者は考えております。
患者さんにお願いしたいことは、「もう少し入院させておいてください~」などということを言わずに、退院可能な病状なら即退院!という原則をお守りいただくこと(入院期間がながければ長いほど耐性菌暴露・院内感染のリスクはそれだけ高くなります)。「抗生物質もください!」などということを言わないこと」逆に「ホントウに抗生物質必要なんですか?」と医師に質問してみるくらいが良いかと思います。ホントウに必要なら医師がしっかり説明してくれるはずです。
→ホントウに必要なら必ず処方されたとうりに飲み切ること(いい加減な抗菌薬の使い方は、耐性菌を生み出すリスクにつながる可能性があります)
医療従事者の側も、「標準予防策」「接触感染予防策」「感染症診療の基本原則を守った診療」などの基本事項を徹底すること。
双方の不断の努力が、耐性菌問題・院内感染問題を解決に導くのではないかと考えております。


何か起こったときに考えれば良い~という発想では何時まで経っても改善できないのが耐性菌・院内感染問題なのかと思います。何か起こってからでは遅すぎるのです・・・

2010年9月13日月曜日

第2回感染症セミナー

第59回日本感染症学会東日本地方会学術集会で勉強になりそうな会の申し込み受付中のようです。

第2回感染症セミナー

(上記URLで第2回感染症セミナー申込WEB SITEにつながります)

「症例から学ぶ感染症セミナー」対象者は、感染症の勉強したい医療従事者という感じでしょうか?

近年、日本感染症学会は日本の感染症業界のリーダーとしての自覚が出てこられたのか、いろいろと素晴らしお仕事をされております。

そのひとつが、「感染症教育」の充実への努力でしょうか?

まだまだ、日本で臨床感染症を勉強することのハードルは高いのかもしれませんが、少しずつ改善してきていることを実感いたしております。


2010年9月11日土曜日

12 Steps to Prevent Antimicrobial Resistance:CDC

多剤耐性アシネトバクターを皮切りに、多剤耐性菌の話題が最近立て続けに報道を賑わわせております。

抗菌薬耐性菌や院内感染症の報道を毎日されてはいますが、ではどのようにしたら院内感染症や多剤耐性菌の出現を改善することができるのか?の方法論まで言及したものはまだまだ少ないのではないかと思われます。

以前から、世界中の感染症業界の皆様は、

「このままでは使える抗菌剤はなくなってしまうよ~」とか
「院内感染対策しないと犠牲者が増えるよ~」
と度々警告を発しておりました。

その代表的なものが、CDCが提唱しております12 STEPSです。

上記サイトは”12 Steps to Prevent Antimicrobial Resistance Among
Hospitalized Adult 
という「成人の入院患者での抗菌薬耐性菌防止のための12ステップ」というものです。

それ以外にもいろいろな耐性菌防止キャンペーンをおこなっております
Campaign to
Prevent Antimicrobial Resistance in Healthcare Settings

で今回ご紹介する
12 Steps to Prevent Antimicrobial Resistance Among
Hospitalized Adult

まずは予防”PREVENT INFECTION"です
Step1:Vaccinate ワクチン
   インフルエンザウイルスのワクチンや肺炎球菌ワクチンなど、ワクチンで予防可能なものはしっかりと予防しましょうねというお話

Step2:Get the catheter out いらないカテは抜去しようね!
    カテーテル(尿路、血管内など)や、治療で使う各種挿入物(異物)は留置しておくと院内感染症発症のリスクとなるから、イラナイカテ(異物)はさっさと抜去!

Diagnose & Treat Infection Efectively しっかりとした感染症の「診断」と「治療」をしましょう
Step3:Target the pathogen 病原体をしっかと特定!
    適切な抗菌化学療法で命が救える:抗菌薬の投与設計、標的病原体をしっかと!

Step4:Access the experts 専門家に相談しましょう
    ここはなかなか日本では難しいかもしれませんが、院内・院外の感染症専門家に相談できるシステムが必要かと思います

Use Antimicrobials Wisely 抗菌薬を賢く使う!
Step5:Practice antimicrobial control 抗菌剤の使用をコントロールする
    抗菌薬の適正使用に導くためのシステムを導入:抗菌薬届出制・許可制もひとつ?

Step6:Use Local Data ローカルデータ(ANTIBIOGRAM?)を使いましょう
    院内感染症で問題となる「緑膿菌」や「アシネトバクター」などは、各医療機関毎に抗菌薬の感受性パターンが異なります。そのため、各医療機関毎に”ANTIBIOGRAM"を作成してそれを参考に抗菌剤の選択を行うことかと思います。

Step7:Treat Infection,not contamination
Step8:Treat Infection,not colonization
   これは簡単でしょう!「感染症」を治療するのであって、「コンタミ」(雑菌の混入)や「保菌」状態でただそこに居るだけの菌(悪さはしていない菌)を治療するために抗菌剤を使わない!!
でも結構難しいのです・・・喀痰から”MRSA”検出!→即バンコマイシン・・・やめましょう:本当に感染症をきたしているのか?ただそこに「居る」だけの菌なのか・・・
「緑膿菌」や「アシネトバクター」なんて、ただそこにいるだけの菌に必死に抗菌薬使っていたらそれこそ「多剤耐性〇〇」になってしまいますよ・・・

Step9:Know when to say "no"to vanco バンコマイシンが本当に必要ですか?
   バンコマイシンが本当に必要な感染症なのか?バンコマイシンの乱用は耐性菌の選択・拡大につながる危険性があります

Step10:Stop Treatment when infection is cured or unlikely
      感染症が治ったり、実は感染症ではなさそうだとわかったらすぐに抗菌薬を中止しましょう

Prevent Transmission 耐性菌伝播の防止
Step11:isolate the pathogen 病原体を隔離する
  標準予防策、接触感染予防策、空気感染予防策など、感染経路別に必要な対策をとりましょう!現在話題の「多剤耐性アシネトバクター」は?→接触感染予防策

Step12:Break the chain of contagion 感染の連鎖を断ち切る!
   「感染の連鎖を断ち切る」 なんかかっこいい表現ですね
   院内感染がアウトブレイクする前に、感染の発症を早期に気づいて、「感染の連鎖を断ち切る」努力が求められております。
院内感染で、耐性菌が患者さんから医療従事者の手指・医療機器などを介して他の患者さんへ伝播することが分かっております。手洗いなどの基本的な感染対策の徹底が院内感染対策の基本なのではないかと思います。コメント欄にもご意見いただいてますので是非読んでみてください。

以上、簡単にCDC 12 STEPSという院内感染症対策について書かせていただきました。
院内感染症は「ゼロ」になることは無いにしても、CDC 12 STEPSのようなものを参考に各医療機関で可能な院内感染症対策を行うことによって『減らす』ことは可能なのではないかと思います。

院内感染アウトブレイクがこれまでもしばしば報道されてきましたが、これまで制圧できていないいアウトブレイクは無いのではないかと思います。
大変だとは思いますが、医療従事者・患者さんなど病院に関わる全ての方々の不断の努力があればそれなりの効果のある感染症対策ができるのかな?と思います。

2010年9月9日木曜日

NDM-1産生菌~日本感染症学会の分かりやすい説明

日本感染症学会から、先日話題になった「NDM-1」「NDM-1産生菌」

についての医療従事者向けの分かりやすい解説がWEB SITEに掲載されております。

http://www.kansensho.or.jp/topics/100908ndm-2.html
(上記URLで日本感染症学会WEB SITEに接続)

臨床現場では、しばしば「いつもと同じような患者さんだろう・・・」

「いつもどうりの診療でなんとかなるし・・・」

という感じで対応する場合が多いのではないかと思います。

実際に、「インフルエンザ」は似たような症状・所見で多数の患者さんが来院しますし、

肺癌も、人それぞれ異なると入っても、おおきな捉え方では似たようなプレゼンテーションで受診されます。

同様に、新たな耐性菌による「感染症患者」さんも、おそらくそれとはワカラナイ臨床症状・所見で来院されるのでしょう。

どうすれば、「慌てない」で新たな耐性菌感染症に対応可能となるのでしょうか?

前もって、「NDM-1産生菌」のような情報をつかんでおき、

「もしかしたら今日にも自分の目の前に新たな耐性菌感染症患者さんが現れるかもしれない」

と常にこころの片隅にとどめておくと、「おっやっときたか!」と慌てずに対応できるのではないかと思います。

常日頃、最新の情報に接する機会を作っておくことが大切かもしれませんね

2010年9月7日火曜日

日本感染症学会の動き

昨年の「新型インフルエンザ騒動」でも、大活躍をされた『日本感染症学会』。

今回の「耐性菌騒動」でも、いろいろと頑張ってくれそうです。

多剤耐性アシネトバクターについて
http://www.kansensho.or.jp/topics/100907acinetobacter-2.html

多剤耐性菌に対する日本感染症学会の考え方
http://www.kansensho.or.jp/topics/100907acinetobacter.html


先週末より多剤耐性細菌による院内感染事例や外国で感染された症例が立て続けに報道されています。日本感染症学会は、理事会を中心に関連他学会と強く連携しながら、多剤耐性菌の諸問題について専門家集団としての意見を集約し、発信して参ります。
2010年9月7日
日本感染症学会理事長
岩本 愛吉
短いので、上記に「多剤耐性菌に対する日本感染症学会の考え方」を全文記載しました。

ただし、「考え方」はこれから発信されるようですね。。。

昨年の「新型インフルエンザ騒動」では、専門家集団として威力を発揮されました。

今回は、耐性菌による感染症患者さんの診療(治療)のプロフェッショナル、細菌学・微生物学の専門家、臨床疫学・感染制御学の専門家などの多職種の共同作業になるかと思われます。

「全部感染症の専門家なんじゃないの???」と思われるかもしれませんが、実は色々と仕事内容が異なったりします。

マスコミの皆様や、インターネットのおかげでこれだけ大きな騒動となった「抗菌薬耐性菌問題」。

日本の感染症業界の真価が問われております。