多剤耐性アシネトバクターを皮切りに、多剤耐性菌の話題が最近立て続けに報道を賑わわせております。
抗菌薬耐性菌や院内感染症の報道を毎日されてはいますが、ではどのようにしたら院内感染症や多剤耐性菌の出現を改善することができるのか?の方法論まで言及したものはまだまだ少ないのではないかと思われます。
以前から、世界中の感染症業界の皆様は、
「このままでは使える抗菌剤はなくなってしまうよ~」とか
「院内感染対策しないと犠牲者が増えるよ~」
と度々警告を発しておりました。
その代表的なものが、CDCが提唱しております12 STEPSです。
上記サイトは”
12 Steps to Prevent Antimicrobial Resistance Among
Hospitalized Adult という「成人の入院患者での抗菌薬耐性菌防止のための12ステップ」というものです。
それ以外にもいろいろな耐性菌防止キャンペーンをおこなっております
Campaign to
Prevent Antimicrobial Resistance in Healthcare Settings
で今回ご紹介する
12 Steps to Prevent Antimicrobial Resistance Among
Hospitalized Adult
まずは予防”PREVENT INFECTION"です
Step1:Vaccinate ワクチン
インフルエンザウイルスのワクチンや肺炎球菌ワクチンなど、ワクチンで予防可能なものはしっかりと予防しましょうねというお話
Step2:Get the catheter out いらないカテは抜去しようね!
カテーテル(尿路、血管内など)や、治療で使う各種挿入物(異物)は留置しておくと院内感染症発症のリスクとなるから、イラナイカテ(異物)はさっさと抜去!
Diagnose & Treat Infection Efectively しっかりとした感染症の「診断」と「治療」をしましょう
Step3:Target the pathogen 病原体をしっかと特定!
適切な抗菌化学療法で命が救える:抗菌薬の投与設計、標的病原体をしっかと!
Step4:Access the experts 専門家に相談しましょう
ここはなかなか日本では難しいかもしれませんが、院内・院外の感染症専門家に相談できるシステムが必要かと思います
Use Antimicrobials Wisely 抗菌薬を賢く使う!
Step5:Practice antimicrobial control 抗菌剤の使用をコントロールする
抗菌薬の適正使用に導くためのシステムを導入:抗菌薬届出制・許可制もひとつ?
Step6:Use Local Data ローカルデータ(ANTIBIOGRAM?)を使いましょう
院内感染症で問題となる「緑膿菌」や「アシネトバクター」などは、各医療機関毎に抗菌薬の感受性パターンが異なります。そのため、各医療機関毎に”ANTIBIOGRAM"を作成してそれを参考に抗菌剤の選択を行うことかと思います。
Step7:Treat Infection,not contamination
Step8:Treat Infection,not colonization
これは簡単でしょう!「感染症」を治療するのであって、「コンタミ」(雑菌の混入)や「保菌」状態でただそこに居るだけの菌(悪さはしていない菌)を治療するために抗菌剤を使わない!!
でも結構難しいのです・・・喀痰から”MRSA”検出!→即バンコマイシン・・・やめましょう:本当に感染症をきたしているのか?ただそこに「居る」だけの菌なのか・・・
「緑膿菌」や「アシネトバクター」なんて、ただそこにいるだけの菌に必死に抗菌薬使っていたらそれこそ「多剤耐性〇〇」になってしまいますよ・・・
Step9:Know when to say "no"to vanco バンコマイシンが本当に必要ですか?
バンコマイシンが本当に必要な感染症なのか?バンコマイシンの乱用は耐性菌の選択・拡大につながる危険性があります
Step10:Stop Treatment when infection is cured or unlikely
感染症が治ったり、実は感染症ではなさそうだとわかったらすぐに抗菌薬を中止しましょう
Prevent Transmission 耐性菌伝播の防止
Step11:isolate the pathogen 病原体を隔離する
標準予防策、接触感染予防策、空気感染予防策など、感染経路別に必要な対策をとりましょう!現在話題の「多剤耐性アシネトバクター」は?→接触感染予防策
Step12:Break the chain of contagion 感染の連鎖を断ち切る!
「感染の連鎖を断ち切る」 なんかかっこいい表現ですね
院内感染がアウトブレイクする前に、感染の発症を早期に気づいて、「感染の連鎖を断ち切る」努力が求められております。
院内感染で、耐性菌が患者さんから医療従事者の手指・医療機器などを介して他の患者さんへ伝播することが分かっております。手洗いなどの基本的な感染対策の徹底が院内感染対策の基本なのではないかと思います。コメント欄にもご意見いただいてますので是非読んでみてください。
以上、簡単にCDC 12 STEPSという院内感染症対策について書かせていただきました。
院内感染症は「ゼロ」になることは無いにしても、CDC 12 STEPSのようなものを参考に各医療機関で可能な院内感染症対策を行うことによって『減らす』ことは可能なのではないかと思います。
院内感染アウトブレイクがこれまでもしばしば報道されてきましたが、これまで制圧できていないいアウトブレイクは無いのではないかと思います。
大変だとは思いますが、医療従事者・患者さんなど病院に関わる全ての方々の不断の努力があればそれなりの効果のある感染症対策ができるのかな?と思います。