夏休みは、海外旅行に行かれるヒトも多数いらっしゃるのではないでしょうか?
どちらの国に行かれるにしても、一般的に健康管理が大切であることはご理解されているのではないかと思います。
これまでは、海外旅行後の感染症というと?「マラリア」とか「チフス」、「デング熱」など、その地域特有の病原体による感染症を考慮する場合が多かったのではないかと思います。
しかし、近年一般的な病原体による感染症、例えば「肺炎」「尿路感染症」などでも海外旅行後の患者さんについては抗菌薬の選択などで十分注意することが必要な時代となってしまっているようです。
昨年KPC:Klebsiella pnumoniae carbapenemaseというカルバペネムまで分解してしまう酵素を産生するクレブシエラという菌があることをご紹介いたしました。(幸い日本ではまだそれほど問題になっておりませんが)
「クレブシエラはオソロシイ」
http://srcrespiro.blogspot.com/2009/06/blog-post_15.html
今度は、NDM-1:New Delhi metallo-β-lactamase 1というあらたなキーワードの登場です。。。
”Drug resistant 'superbug' found in hospitals in London and Nottingham"
http://www.dailymail.co.uk/health/article-1302432/Drug-resistant-NDM-1-superbug-London-Nottingham-hospitals.html
上記WEB SITEによると、インド、パキスタンからイギリスへの帰国者でNDM-1というメタロβラクタマーゼ産性する「大腸菌」「肺炎桿菌」がみつかっているようです。
カルバペネム系を含むほとんど全ての抗菌剤に耐性という、オソロシイ菌で、しかも「プラスミド」上にNDM-1遺伝子が存在するため、菌種の壁を超えて、このNDM-1遺伝子が広まってしまうことが脅威になるというようなことが書いてあるようです。
また、こういった耐性菌が英国に持ち込まれる背景に、「メディカルツーリズム」と言われる、英国以外の地域に渡航しての侵襲的医療行為があるのではないか?ということも示唆されています。
こういった「耐性菌」と戦うためにあらたな抗菌剤の開発が必要ですね・・・
とはさいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ作者は、結論付けたくありません。
もちろん、新たな耐性菌の脅威に対して、それに対抗可能な抗菌剤の開発は必要かと思います。
アジアの諸国でこういった「耐性菌」が出現→拡大していく背景には、「抗菌薬」を使用せざる負えない社会状況・衛生状態があるのではないかと推測いたします。
こういった地域では、「医療のレベルアップ」、「新たな抗菌剤開発」といった対策よりも、
「キレイで衛生的な飲み水の安定的な確保」
「下水道、下水処理場を整備して、川の水をキレイにする」
「食料の安定的供給よる栄養状態の改善」
などの対策のほうがよっぽど役に立つのではないかと思います。
医療従事者の視点からは、このあらたな”プラスミド”上の耐性遺伝子”NDM-1”の存在を認知すること。
現在のところ、”Escherichia coli” ”Klebsiella pnumoniae”で確認されていること。
Escherichia coliやKlebsiella pnumoniaeによる、尿路感染症、肺炎、敗血症、胆道感染症などが、海外渡航歴にある患者さんに発生したときは、「万が一にはNDM-1産生菌によることもあるのかな・・・」と頭の片隅においておくこと。
とくにキーワード「メディカルツーリズム」も要注意です・・・
(近年日本からのアジア各国への医療目的の渡航もあるとおききしております)
取り急ぎできることはそういったことでしょうか?
アジア諸国からの帰国者に限らず、海外渡航歴のある患者さんでは、旅行者に特殊な感染症だけに注目するのではなく、一般的な「肺炎」「尿路感染症」「敗血症」などの病態でも、治療薬の選択に注意しなければならない時代となってしまったのかもしれませんね。
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