2010年3月21日日曜日

肺ノカルジア症のまとめ

☆肺ノカルジア症のまとめ

1999年~2009年まで、日本呼吸器学会雑誌掲載
キーワード:Nocardiosis、ノカルジアで検索→Total19編うち1編は肺ノカルジア症治療経過中にノカルジア脳膿瘍発症の同一症例のため除外。以下まとめ記載します。


・日本呼吸器学会雑誌掲載論文1999年~2009年まで

・Total 18編
・掲載雑誌名:症例:基礎疾患:発見契機:ノカルジアを疑った検体検査:治療薬:入院後ノカルジアに最適な治療方法にたどり着くまでの日数

・1999;37(2):54歳男性、クッシング症候群:胸部異常陰影、気管支内採痰グラム染色所見→培養陽性Nocardia asteroides ST+IPM 不明
・2000;38(9):55歳女性:Evans症候群ステロイド内服:発熱・喀痰、咳嗽:気管支洗浄液培養陰性:CTガイド下肺生検培養陽性:Nocardia farcinica:ST+SPFX:57日間
・2000;38(11):74歳男性:生来健康:発熱、湿性咳嗽、呼吸困難:BALF抗酸菌塗沫陽性:Nocardia otitidiscaviarum:CAM+AMK:20日間
・2001;39(3):35歳男性:クッシング症候群:咳嗽、血痰:喀痰グラム染色陽性:Nocardia otitidiscaviarum:ST+PAPM/BP 35日間
・2001;39(5):70歳男性:ネフローゼ症候群ステロイド:ST予防投与あり:経皮肺吸引生検培養:Nocardia asteroides:ST:40日間
・2001;39(7):52歳女性:多発性筋炎ステロイド+サイクロフォスファミド内服、糖尿病:湿性咳嗽:喀痰グラム染色陽性:IPM/CS+MINO→ST:18日間
・2002;40(8):55歳男性:糖尿病:胸部異常陰影:喀痰グラム染色所見陽性:Nocardia asteroides:ST+SPFX 不明
・2004;42(9):59歳女性:自己免疫性肝炎ステロイド:胸部異常陰影:CTガイド下生検グラム染色所見陽性:Nocardia nova:ST:2日間
60歳女性:急性骨髄性白血病:頭痛:血液培養:Nocardia nova:CPR
         25歳男性:骨髄移植後ステロイド内服:喀痰グラム染色所見陽性:Nocardia nova:ST
39歳男性:急性免疫不全症候群?:喀痰グラム染色所見陽性:Nocardia asteroides:ST
31歳男性:骨髄移植後ステロイド内服:喀痰グラム染色所見陽性:Nocardia asteroides:ST+IPM/CS
80歳女性:多発性骨髄腫ステロイド内服:喀痰グラム染色所見陽性:Nocardia asteroides:IPM/CS+MINO
50歳女性:気管支喘息:喀痰グラム染色所見陽性:Nocardia farcinica:LVFX
               55歳男性:再生不良性貧血ステロイド内服:喀痰グラム染色陽性:Nocardia cyriacigeorgica:ST+IPM/CS
・2004;42(10):62歳女性:発熱:喀痰グラム染色所見陽性:Nocardia asteroides:MINO:20日間
・2005;43(6):52歳女性:自己免疫性溶血性貧血ステロイド内服:胸痛・発熱:経皮生検グラム染色所見陽性:ST:不明
・2007;45(8):46歳男性:SLEステロイド:発熱・全身倦怠感:喀痰グラム染色所見陽性:Nocardia asteroides:ST:3日間
・2007;45(12):73歳男性:無気肺:胸部異常陰影:喀痰グラム染色陽性:Nocardia asteroides:ST:不明
・2008;46(12):56歳男性:糖尿病、アルコール性肝硬変:頭痛・全身倦怠感・構音障害:ノカルジア脳膿瘍契機:Nocardia farcinica:ST:43日間
・2008;46(12):76歳男性:気管支喘息吸入ステロイド:呼吸困難:気管支洗浄液グラム染色陽性:Nocardia spp.:ST:20日間
・2009;47(6):18歳男性:生来健康:発熱:胸腔鏡下肺生検グラム染色所見疑い例:UNKNOWN:ST→MINO→モキシフロキサシン:19日間
・2009;47(7):51歳男性:気管支拡張症:胸部異常陰影:気管支鏡下採痰グラム染色所見:Nocardia cyriacigeorgica +Nocardia farcinica:ST:不明
・2009;47(8):49歳女性:クッシング症候群:左胸痛:胸水培養陽性:Nocardia asteroides:ST:22日間
・2009;47(4):53歳女性:びまん性汎細気管支炎:発熱・血痰:気管支吸引痰グラム染色所見:Nocardia farcinica:ST+LVFX:46日間

☆何らかの検体のグラム染色所見が診断の契機となった症例:19症例(Total25症例中)

☆喀痰のグラム染色が診断契機となった症例:14症例(Total25症例中)

ノカルジアは培養陽性となるまである程度培養時間が必要(2日間~21日間):
肺ノカルジア症の適切な治療にたどり着くまでの時間は喀痰グラム染色所見が診断契機となったものが最も早いか?

そもそも肺ノカルジア症の早期診断は「グラム染色」などの塗沫所見の検鏡以外では、一般市中病院では困難なはずです。
大学病院などの研究施設では、遺伝子同定検査などを迅速に行うことができるのかもしれませんが、一般市中病院ではムズカシイです。
グラム染色でノカルジアを疑わせる菌が検鏡で見えても培養されてこない場合が結構あるわけですから、培養陽性だけを拾っていたのでは、もしかしたら肺ノカルジア症を見逃してしまう可能性があると考えます。逆に、コンタミネーションの可能性が十分に考えられる菌ですので、グラム染色で見えてないのに、培養陽性や遺伝子同定検査陽性のみで肺ノカルジア症と診断するのも如何なのか?と考えます。

上記は、2010年3月26日の日本呼吸器学会関東地方会の発表の為に勉強したものです。
ご参照いただけましたら幸いです。

最近ノカルジアの同定では遺伝子学的な同定が腫瘤となっております。

上記症例報告はノカルジアの遺伝子同定がほとんどなされていないため、できれば遺伝子同定をし直しての再掲載ができればいいのですが、、、なかなかそこまでは難しいのでしょうね。

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