2009年7月5日日曜日

日本はもっと医療・福祉にお金をかけるべき ヒトにお金をかける国へ

日本は医療レベルは世界有数、医療費は切り詰めという、非常に医療従事者の献身的な努力のみに支えられてきた医療体制でなんとか長寿大国日本を築きあげてきました。

しかし、もうとっくの昔に、医療従事者の献身的な努力だけでは医療レベルを維持していくのは困難で、日本各地で医療崩壊がどんどんと進んでいる現状があります。

たとえば、埼玉県の傍がんセンターで「緩和ケア科」の初診の予約を取るだけで、余裕で1ヶ月以上待ちとのことです。緩和ケアですから、1ヶ月も待っていては、患者様はもしかしたらこの世にすでにいないかもしれません。しかし、現実は「1ヶ月以上待ち」です。しかも、単に外来での診療というレベルでの待ちが1ヶ月以上です。もし、緩和ケア病棟に入院となれば、もっともっと長い「待ち」の時間があることでしょう。

日本は特殊な国なのか、これが世界の「標準」と思っている人が日本の国を動かしているのか、「ヒトにお金をかける」ということをゼッタイにしない国なのではないかと思います。

立派な道路を作ったり、議員宿舎を作ったり、いろいろと「建設業界」にはお金をかけるのに、「ヒト」にはあまりお金をかけていないような気がしております。

例えば、救急医療で「救急車を断るな!!」というなら、「救急車で来る患者様を一人見たらその医師個人に1万円給付する」とかすればおそらく「救急患者」の問題も結構簡単に片付けられるかと思いますが、一向にそういった「ヒト」にお金をかけるような発想の対策がみえてきません。
「救急医療体制を充実する」ためにいくら「病院」に補助金をだしても、現場の「医師」からしたら全くいみがありません。病院の赤字の補填に使われてしまうだけです。
それよりも「医師個人」にしっかりとお金がいきわたるようにすれば、救急医療業界は今よりもっと活気づくと思われますし、多くの救急に携わる「医師個人」がやる気を出してくれるような気がします。

そもそも日本の「医療費」は世界レベルと比較して「高い」or「低い」どちらでしょうか?

「OECDヘルスデータ2009 世界の中でみる日本の状況」

「日本の2006-2007年の総保険医療支出の対GDP比は8.1%であり、OECD平均の8.9%を0.8%下回る」
しかも
「日本の保険医療支出は2000年から2006年の間に実質ベースで2.2%増加しているが、これも2000年から2007年までのOECD平均3.7%を下回っている」
世界有数の長寿大国日本。高齢者人口が急速に増加しているにもかかわらず、諸外国よりも医療費が「増えていない」現実。どこまで日本の国は「医療・福祉」にお金をかけない国なのでしょうか?

また、日本はOECD平均レベルの医療費支出をしないにもかかわらず、OECD諸国で平均寿命がもっとも長いという「とても経済的な医療」をしているということになります。OECD加盟国の中で最も経済的な医療を提供しているのにこれ以上「ムダを省け」というようなことを言ったら、いったい「どこを省く」のでしょう?

これ以上「省けるもの」をあげてみますと、「安全」「信頼」「診察時間」「衛生状態」などなどでしょうか?
もうすでにムダがなく非常に効率的な医療を、経済的な視点からも提供している日本の医療にたいして、これ以上の締め付けをすれば「危険な医療の提供」に結びつくかと思います。

日本の患者となる皆様が、「危険でもいいから医療費減らして」とか「病状説明なんてしている時間いらないから医療費減らして」といわれるならそれも結構かもしれませんが、少なくとも現時点ですでに「崩壊」している医療ですから、「今」と同じレベルの医療の提供であっても、相当な医療費の増額が必要なのはいうまでもありません。すくなくとも「OECD平均レベル」に医療費をもっていってようやく患者となる皆様が「もう少し医療よくしてよ!!」と言えるようになるのではないでしょうか?

いまの状況では、毎年毎年医療の「質」は悪化していくばかりではないかと危惧いたしております。

是非、皆様、来る「選挙」で候補者、政党を選択する際には「医療・福祉にお金かけるんですか?」という視点で選んでみてください。

患者となる可能性のある皆様が「医療・福祉にお金をかけない」人々を選択されるなら、我々医療従事者も医療を徐々に縮小していって、細々と可能な限りの医療を提供し、決してムリはしない姿勢で「防衛医療」に走らざる終えないかもしれません。

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