2009年6月6日土曜日

”NARROW IS ART” ”NARROW IS BEAUTIFUL”

本日、IDATENの勉強会に参加してきました。
本日は特別公演で日本の感染症教育・診療の第一人者「青木真先生」の御講演を聞くことができました。
その中で、”NARROW IS BEAUTIFUL”というお言葉を何回も聴きました。

”NARROW IS BEAUTIFUL”とは、どういう意味か?

感染症診療は抗菌剤の開発・進歩の恩恵を受けて飛躍的に発展を遂げてきました。
その成果として、「カルバペネム」や「フルオロキノロン」などのいわゆる”BROAD SPECTRUM"(いろいろな菌種に有効である感じ)の抗菌剤が多数開発されました。「どのような菌でもなんでも効く」というのは、一見よさそうに見えますが、「何でも効くだろう」と考え、あまりアタマを使わないでも感染症診療が一定レベルで「できる」ようになってしまいました。
しかし、このような”BROAD SPECTRUM”の抗菌剤の登場→乱用は多くの恐ろしい抗菌剤「耐性菌」 の出現を招いてしまいました。
このままでは人類は「抗菌剤耐性菌」によって再び「抗菌剤の無い時代」に逆戻りしてしまうかも知れないという危機感が感染症専門家の中には広がっています。

「抗菌剤耐性菌」の問題は実は「地球環境問題」と似たような側面があるのではないかと思っております。それは、当初地球環境問題を専門家が指摘したときには残念ながら多くの人々が「私には関係ない」と思っていたように感じております。しかし、地球温暖化など現実の問題が生じてからこれは「ヤバイ」といまさらながら「地球環境問題」に取り組もうと必死になっています。(まだ日本人には危機感が足りないという指摘もありますが)。
「抗菌剤耐性菌」の問題も以前から「感染症専門家」が”BROAD SPECTRUM”な抗菌剤を乱用していると大変なことになると指摘し、「抗菌剤の適正使用」を呼びかけていましたが、あまり自分の問題として捉えている「医療従事者」とくに抗菌剤を実際に使用する「医師」にはこの言葉を自分の問題として捉えている人は少なかったように見受けます。ブログ作者自身も残念ながら医師になりたてのころはこういったことは自分の問題とは考えていなかったです。
しかし、もう「あとがない」状況です。
そこで”NARROW IS BEAUTIFUL”というわけです。必要最小限の「狭域」スペクトラムな抗菌剤を選択することによって抗菌剤耐性菌の誘導・出現を最小限に食い止めよう!!というわけです。
ブログ筆者はそれに”NARROW IS ART”も付け加えたいと思います。
「狭域」スペクトラムの抗菌剤を使用するには、感染症診療の「知識」と「経験」とそれを使いこなす”ART”が必要と考えます。
これからの感染症診療の標語は

”NARROW IS ART” ”NARROW IS BEAUTIFUL”

というのを提案をしていこうと思います。
さいたま赤十字病院では呼吸器内科からこのメッセージを発して行き、
病院全体→地域全体→日本全体へとこういった「感染症診療の正しい思想」が広まることを期待しております。


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