新聞やニュースなど一般メディアや、医療系ニュース・ブログでも話題沸騰の日本感染症学会からでた、
緊急提言「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」
(上記URLで日本感染症学会WEB SITEにつながります)
「新型インフルエンザ診療ガイドライン第一版」
(上記URLで日本感染症学会WEB SITEにつながります)
上記文章は、医療関係者「全て」が必読です!!読んでない方々は大至急上記URL参照して全部くまなくよんでください!!
とは言っても、なかなか忙しかったり、「?」な内容があったりするヒトもいらっしゃるかと思い、さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログでも重要な点を、ブログ作者の視点から書かせていただきたいと思います。(日本感染症学会の公式見解ではありませんので、ご注意ください)
非常に荒っぽく言うと、ブログ記事タイトルにもあるように「タミフル・リレンザ積極処方へ!!」ということを明確に提言している点がしびれます。
これまで、さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ作者も、耐性ウイルス問題や薬剤自体在庫量などの心配、これまでのつたない臨床経験から、抗インフルエンザウイルス薬の積極処方にはチョット疑問を感じていました。しかし、本日、日本感染症学会の新型インフルエンザ診療ガイドラインや緊急提言を読ませていただき、「タミフル・リレンザ積極処方」に方針転換させていただこうと思っております。
まず、これまでの「新型インフルエンザウイルス感染症」に対しての、臨床経験や報告などのまとめがされております。これをまたざっくりブログ作者の視点で要約すると、タミフル(リレンザ)を早期に投与されたヒトのほうが、死亡率・予後が良かったみたい!!ということのようです。
もう一つ、このガイドライン作成者の「イイタイコト」が(こちらが最もイイタイコトのように感じましたが)
「全ての医療機関が『新型インフルエンザ』を手分けして診るように!!」
ということではないかと思いました。おそらく多数の大学病院の先生方がこのガイドライン・緊急提言の作成にかかわっているにもかかわらず、自虐的に「大学病院も殿様商売やってないで重症「新型インフルエンザ」患者の診療できるように準備しなさい!!」と言っているようで、本当に日本国民のためのものを作っていただいたんだなあと思いました。
各々の医療機関・医療従事者の「立ち位置」というのは当然かんがえなければいけませんが、各自が日本国民に対して「何ができるのか?」を考えて、自分の可能な範囲で「新型インフルエンザ診療」に立ち向かっていただく必要があるのではないかと思いました。(当然そのための協力を行政サイドや一般市民の皆様にもお願いすることになりますが)
また、これまでの季節性インフルエンザの重症例のように、「細菌性肺炎の合併」で重症呼吸不全にいたるという例よりも「新型インフルエンザウイルスそのものによる『ウイルス性肺炎』によって重篤化する」ことを重要視されております。
「ウイルス性肺炎」。皆様みたことありますか??さいたま赤十字病院でも、1年に1人も患者さんを確定診断することは困難な診療の難しい病態が「ウイルス性肺炎」です。ブログ作者はまだ、自分が主治医として「ウイルス性肺炎」の診療に従事した経験はございません。
なので、今回はもしかしたら初めて「ウイルス性肺炎」の診療に従事することになるかもしれないわけです。
また、人工呼吸器や、ウイルス感染後の細菌感染症に対しての対策も充分に行うよう提言されております。「抗菌剤」のストックは十分しておく。人工呼吸器の確保は大丈夫?などです。
診断の問題にも触れられております。
「インフルエンザ迅速診断キット」は、ちゃんと考えて使えば「使える」検査キットなのです。「特異度」がとても高い検査キットなので、インフルエンザ迅速診断キットで、この時期に「A陽性」の結果がでれば、これは「新型インフルエンザじゃん!!」と考えていいとブログ作者は思っております。(全例にPCR確認検査はできっこありません)。
ただし、「感度」については「イマイチ」なところがあり、50-70%程度のホンモノの新型インフルエンザ患者の方しか「陽性」にならないという点は十分に注意が必要です。
つまりは、インフルエンザみたいな症状があって、インフルエンザ迅速診断キットが「陰性」となっても、「チョットまてよ!!」もしかしたら「偽陰性」かな?と立ち止まって考える「知恵」を持ってください!!
なので、「タミフル」「リレンザ」はこれまでよりも、より多くの患者さんに処方する流れに、このガイドラインでなっていくのではないかとブログ作者は確診いたしております。
また、一見インフルエンザかな?という症状の患者さんでも、「まてよ、他の病気が隠れてないかな?」という「眼」での診療もこういう時期には特に必要かもしれません。事実、「熱」が出る病気はものすごく沢山ありますから。「熱」=『インフルエンザ』というような短絡的な考え方は、やはり良くないです。とはいっても疾患頻度的には「インフルエンザ」がこれから暫くの間、「熱」の出る患者での鑑別疾患の上位に上がってくるのは間違いありません。
治療については、新型インフルエンザ・もしくは疑い例には、積極的に「タミフル」「リレンザ」処方していきましょう!!ということだと思います。ただし、どこかの時点で、振り返って「結果はどうだったかな?」という客観的な視点での見方をすることも必要でしょう。
「接触者の予防投与」も、これまた綺麗に定義されて書かれています。これも、感染の危険性が高ければ積極的に「タミフル」予防投与していきましょう!!ということのようです。
マスクについてはいろいろと「議論」のあるところで、サージカルマスク積極使用を煽っての「マスク不足」もこまります。ブログ作者はガイドラインと同様に「マスクしたほうが良い派」の一人です。(少数波かな?)
また、「気管内挿管」、「気管支鏡」「ネブライザー」などの処置に携わる医療従事者は「N-95マスク」を推奨しているようです(さいたま赤十字病院ではすでにこのとおりの推奨でした)。
また、職員の就業規定についても、いろいろと書かれていますが、ポイントとしては「発症後7日間」もしくは「解熱後48時間」は仕事場に来ないように!!という、従来のインフルエンザでの対応とそれほど変わらないものかと思いました。
ここで、さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ作者としては、一般医療機関での「新型インフルエンザ診療」で一番大事なことは「重症度の評価」ではないかと思い、この点についてだけもう少し書かせていただきたいと思います。
おそらく、多数の患者さんが医療機関に押し寄せてくると、いろいろな検査や機材を使用しての「重症度トリアージ」は困難なのかなあと想像いたしております。
じゃあ「お前はどうするんだ!!」と言われたら、ブログ作者は下記の3項目のみ評価して1項目でも当てはまれば「重症」として、高次医療機関への転送を考慮するべきかと考えます。
①意識障害
②呼吸数・呼吸状態の悪化
③ショック・血圧低下
①については、「眼が開かない」などの明らかな意識障害までいたらなくても、家族などに問診をして「なんとなく普段と違う状態」とかいうレベルでも警戒したほうがよいかと思います。
②「呼吸数」皆様、日常診療で活用されているでしょうか?ブログ作者も、数年前までは全く利用していませんでした。というより利用の仕方がわかりませんでした。でも、呼吸回数は重症度の評価に非常に有効です!!特に特別な道具を必要とせず(しいて言えば秒針のついた時計でしょうか?)、だれでもどこでも評価できるバイタルサインだからです。
呼吸数20回/分以下であれば、まあその時点では呼吸状態良しとしましょう。(その後の経過は見たほうがいいですよ)
呼吸数20-25は要注意。
呼吸数25-30は、チョット入院とか考えようかな?
呼吸数30回/分以上→すぐに入院の必要性や呼吸管理について考慮!!
③ショックについては重症なのは異論が無いかと思いますが、注意点は「普段の血圧からどれくらい下がっているか?」かと思います。収縮期血圧「100」だけでは、ダメです。普段の収縮期血圧が160のヒトが収縮期血圧100まで低下していたらこれは「ショック」の可能性が充分に考えられるからです。
まあいろいろと「新型インフルエンザ診療ガイドライン」「緊急提言」からインスパイア(笑)されたことをつれづれなるままに書かせていただきました。ご参考になりましたら幸です。
なお、情報は常に刻一刻と変わっていくものです。今の段階での「正しいと信じること」を書かせていただいているので、内容がガラっと変わるような新たな情報が舞い込んでくるかもしれません。
最新情報に常に注意していってくださいね。
実際に、さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログでは、4月下旬の極早期には、「パンデミックインフルエンザ」という記事を書かせていただき、それへの備えについて書かせていただきました。
その後、「タミフル・リレンザ慎重に」という内容で、タミフル・リレンザの適応を充分に考慮して処方するべきということも書いております。
どれが「正しいのか?」その時々では、その判断がおそらく正しいのです。でも、遠い未来から「今」を見返してみるともしかしたら「それはチョット違うかも」ということがあることでしょう。
でもだれも、「未来の世界から現在をみつめることはできない」こともまた真実です。
しかし、「過去を見つめて現在の対策を練る」ことは可能と考えます。
これから、どんどん増えていく情報に振り回されずに「自分の判断力」を信じて対応していきましょうね。
最後に、さいたま赤十字病院は「新型」インフルエンザ診療では、「重症」患者さんを診療する医療機関の位置づけと考えております。
ですので、お近くの医療機関で「重症」と判定された場合にのみ診療を受け付けさせていただいております。さいたま市周辺の市民の皆様のご理解ご協力の程宜しくお願い申し上げます。
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