2009年9月15日火曜日

正しいことってなあに?

世の中、「勝ち組」or「負け組み」とか「正義」or「悪」のように、いろいろなことを「よい方」と「悪いほう」に2者択一で分けたがる風潮があるように常々思っております。

でも、いろいろなことがホントウにクリアカットに「良い」or「悪い」などと分けられるのでしょうか?

他の業界についてはあまり経験がないため良くわかりませんが、少なくとも医療についてはそんな簡単に「正しいこと」と「間違っていること」を分けることはできないと思っております。

逆に言うと、完全に「間違った医療行為」というのはめったにお目にかかることはありません。

ある病気の患者さんがいて、どのような診療アプローチを行って、どのような治療を行うかは、おそらく医師が100人いれば、細かい区別をすれば100とおりの「正解」があるのではないかと思っております。
おそらく、医療従事者であれば、「納得」していただけるのではないかと思いますが、一般の方々には「正解」が「多数」というのがなかなか理解に苦しむのではないかと思います。

例えば、「咳がでます」というヒトに対して、ある医師は「咳の原因を調べるため、胸部レントゲンを撮りましょう」というかもしれません。またある医師は「取り合えず咳止めの薬で様子をみて改善しなかったらその時に胸部レントゲン撮ることにしましょうか」というかもしれません。

さてどちらの医療行為が正しいでしょうか?

実は、最初の時点では「どちらも正しい」のです。

患者さんの中には、「心配だから胸部レントゲンとか早めに取ってくれるほうが良い」というヒトもいれば、「レントゲンで放射線浴びるのはチョット。。。」というヒトもいるかもしれません。またあるヒトは「私は急いでいるし、今日はオカネがないから咳止めだけほしいなあ。咳がよくならなければその時点で検査しようかな」というヒトもあるかもしれません。
どの希望も、おそらくその場では「正しい」のです。

ただし、時間経過によっては、咳症状がどんどん悪くなって、実は「肺炎」だったとか「結核」だったとか言うこともあるかもしれません。この場合には「レントゲンとっておけばよかった」となります。しかし、多くの「咳」症状の患者さんはいわゆる「カゼ症候群」の方々のため「咳止め」で対象療法という選択枝が正しい場合も十分にありうるわけです。
初診の段階では、そのヒトがこれから「良くなる」状況なのか「悪くなる」状況なのかが良くわからない場合も十分に想定できます。だからどの医療行為を選択しても全て「正しい」といえるのです。

また、医療は対象としている相手が「ヒト」という、ひとつとして「同じ」モノがない存在をターゲットとしている点も考えなければいけません。
同じような状況に見えても、それぞれの患者=ヒトは完全には同じ生物ではありません。似たように見えても、食べるものも違えば、「タバコ」「酒」など嗜好品なども異なっております。双子の兄弟でも完全に同じ人なんている分けないのです。

こういった見方はもしかしたら私が「医療従事者」だからなのかもしれません。
でも、一般の方々やこれから医療従事者を目指す方々に、上記のような考え方をするヒトも世の中にはいるんだなあ程度には知っておいてほしいと思って書かせていただきました。


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