抗菌剤の適正使用が叫ばれて久しいですが、抗菌剤の適正使用の目指すものはいったいどこなのでしょうか?
三鴨先生は、「目の前の患者の治療が第一」と明確に打ち出されております。
抗菌剤の使用方法の技術論や耐性菌問題ばかりを前面に出して果たしてよいのだろうか?
そもそも抗菌剤というものは眼前の「患者」を治療するための薬剤ですから、それを使用する大原則は「耐性菌の出現抑制」ではなく、「患者の命を救うこと」が大原則となります。
その中で、感染症診療の基本原則として大事なことを3点大事な順に挙げておられました。
①SOURCE CONTROL
②TO KNOW THE ANTI BIOGRAM
③APPROPRIATE ANTIBIOTIC USE
感染症診療に従事し、抗菌剤の使い方に「ウルサイ」ヒト(自分も)は感染症診療では③の「適正な抗菌剤の使い方」の部分のみ知識・経験を身につけて、何とかしようという方々がいらっしゃいますが、「感染病巣・感染源」をなんとかしない限り、抗菌剤をいくら「適正」に使用したって「なんとかならない」こともこれまた事実です。
たとえば、呼吸器内科ではよく「膿胸」の患者さんを診療させていただきます。
「膿胸」に対して、いくら「かしこい」抗菌剤の使い方をしてもおそらくそれ「だけ」では治療は困難でしょう。
そう”SOURCE CONTROL"としての「胸腔膿瘍ドレナージ」を行わなければ治療は困難です。
次に、三鴨先生は”ANTIBIOGRAM"という考え方をかなり広く捕らえられていらっしゃいました。
国別の原因菌の”ANTIBIOGRAM"。
臓器別の原因菌の頻度に関する”ANTIBIOGRAM"
各地域での市中感染症の原因菌の”ANTIBIOGRAM"
各医療機関の院内感染病原菌の”ANTIBIOGRAM"
などなどです。このように各”ANTIBIOGRAM”を充分に「知る」ことは、微生物という眼に見えない「相手」を十分に推定する手がかりになるのだということを改めて感じました。
ここまで、きてようやく「抗菌剤適正使用」が生きてくるのでしょう。
最近の感染症領域では、「サンフォード」などの米国や他国のマニュアルを参考にした感染症診療がはやっているように思います。
「サンフォード」はあくまでも「アメリカ」の”ANTIBIOGRAM"や国のさまざまな事情を参考にして作られた抗菌剤のマニュアルです。
また、CLSIの抗菌剤判定基準もこれまた「アメリカ」での使用を念頭において作成された判定基準化と思います。
こういったところも、「日本」の実情に合わせて充分に考えて使用しないといけないということも三鴨先生はお話されておりました。
また、抗菌剤の適正使用を誘導する方法として、多くの病院が行っているであろう
「届出性」 「許可制」についても、警鐘を鳴らしておられました。
正しい感染症診療が身についているスタッフがある程度そろっていればの前提でのお話と思いますが、
抗菌剤の「使用調査制」という新たな考え方もご呈示いただきました。(ブログ作者は不勉強でこの「抗菌剤使用調査制」については全く知りませんでした)
この「抗菌剤使用調査制」は、これまでの、「届出制」「許可制」のデメリットである、医師の過剰な広域抗菌剤の使用抑制の問題を解決するシステムかもしれません。
重症で且つブロードスペクトラムの抗菌剤のゼッタイ適応というのはなかなか難しいのですが、「許可制」や「届出制」では、医師の心に無用な「抑制」が係り、本来必要な抗菌剤が使用されない自体が生じる危険性をはらんでおります。
それに対し、「使用調査制」では、実際に、使用されている抗菌剤を調査し、それがどのような「ターゲット」(臓器・原因菌)にしようされているか?また、期間は適正か?などをモニターする方法のようです。
感染症専門知識を持つマンパワーを必要とするため、なかなか大変かもしれませんが、非常にメリットも多いシステムではないかと思いました。
ただし、感染症・抗菌剤の使用能力が医師各位でかなり違うため、なかなか難しいのですが、ある一定レベル以上の感染症診療能力を見についている医師が多数いる施設では、この「使用調査制」はなかなかすばらしいシステムかもしれないと思いさいたま赤十字病院でも導入が可能なレベルまで達するように努力していきたいと考えております。
「抗菌剤の適正使用」のみで、すべてがう「うまくいく」わけではないこと。
これはやはり、感染症・抗菌剤の勉強をある程度された皆様が改めて認識すべき事項ではないかと思いました。
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