2009年6月7日日曜日

昨日元気で今日ショック症候群 byDr.青木

本日、都内某所で開催された、感染症の症例検討会に参加させていただきました。

講師の青木先生の臨床示唆に富むお話と、慈恵医大感染制御科の加藤先生のすばらしいプレゼンテーションで、こういうふうにケーススタディを進行していけば、理解が深まるのかと感心いたしました。
本日の経験をさいたま感染症勉強会のプレゼンテーションでも活かしていけるように努力してまいります。

今回勉強したことで最も印象深かったのが「昨日元気で今日ショック症候群」byDr.青木でした。
普段基礎疾患のない、健康な成人で、突然ショックのプレゼンテーションを呈してくる病態として下記をご教授いただきました。特徴的な皮疹を呈していればさらに診断価値が高いようです。

1:TSS:toxic shock syndrome, STSS:streptococcal toxic shock syndrome
   TSSはブドウ球菌によるもの。STSSは溶連菌などによるもの。
   治療はMSSAならCEZ±CLDM、MRSAならVCM±リネゾリド(CLDMやリネゾリドは蛋白合成阻害  
   剤として、毒素産生を抑制?)。STSSはPCG±CLDM?
   トキシックショック症候群については下記のHPに詳細や診断基準の掲載がございます。
   ご参照ください。
   http://www.jhpia.or.jp/standard/tss/tss1.html

2:髄膜炎菌敗血症:PCG、CTRXなどで加療。
   髄膜炎菌感染症の詳細につきましては下記のHP御参照ください
   http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g3/k01_43/k01_43.html

3:感染性心内膜炎(特に黄色ブドウ球菌は進行がとても早いとのこと)

4:リケッチア感染症:ツツガムシや日本紅斑熱とか?MINOで加療
   リケッチア感染症(主にツツガムシ病)については下記ご参照ください
  http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/004_chousa/04_reserch/files/33_00.pdf

5:肝硬変症患者でのVibrio vulnificus敗血症:肝硬変患者が「海水」接触や「生の海産物」摂取で生じる重篤な感染症。九州地方での報告が多いですが、数年前にさいたま赤十字病院でも一例経験しております。
   ビブリオブルニフィカス感染症については下記HPご参照ください。
   特に今回の症例呈示でも非常に診断価値の高い「皮疹」の写真が本HPに掲載されております。
   一度見ておくと一生忘れない?
   http://idsc.nih.go.jp/disease/vulnificus/

6:脾機能低下、無脾症(先天的or後天的:脾摘後)
   髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌など
   ペット(犬など)の口腔内にいる菌:Capnocytophaga?も注意
   脾摘後の重症感染症については下記HPご参照ください。臨床病理学的解説も勉強になります。
   http://blog.livedoor.jp/garjyusaiga/archives/51738248.html

7:劇症型Clostridium perfringens(ガス壊疽菌)感染症
 Clostridium perfringensは溶血毒素を産生する嫌気性菌です。血液培養ボトルを観察すると、溶血のため黒色に変化していることからきづかれることもあります。血管内溶血により急速にHb低下が進行することもあるようです。
  http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g1/k01_07/k01_7.html
  https://www.jstage.jst.go.jp/article/kansenshogakuzasshi1970/76/7/76_7_562/_pdf


さいたま赤十字病院呼吸器内科でも、6の脾機能低下、無脾症の患者様での「超重症」肺炎球菌肺炎・敗血症患者様についてはしばしば経験いたしておりますが、本当にビックリするぐらい病状の進行が早いのを実感いたしております。こういった患者様の多くは初診時のバイタルサインが重症なのに「CRP」がそれ程高くない、場合によってはCRP<0.5と正常範囲だったりするので要注意です。CRPに依存した診療をしていると大変なことになるなあと実感する病態だったりします。

2 件のコメント:

加藤です さんのコメント...

はじめまして。慈恵医大感染制御部の加藤と申します。調べ物をしていて偶然このブログにたどり着き、記事を拝見しましたのでコメントを投稿します。
先日は症例検討会にお越しくださいましてありがとうございました。参加人数は若干さびしかったのかもしれませんが、その分気軽に直接の質問・討論ができ、充実した会合であったと思います。皆様のお役にたてば幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

呼吸器内科 さんのコメント...

慈恵医大感染制御部 加藤先生

コメント大変ありがとうございました。
先日は、すばらしい症例プレゼンテーションありがとうございました。気軽に質問できる勉強会はまだまだ少ないかと思います。今後も機会がございましたら、いろいろとご教授お願いいたします。