まあ、そんな状況でも、さいたま赤十字病院呼吸器内科には、さまざまな症状や病気の方々が訪れます。
ここ10年くらいで、飛躍的?に患者数が多くなってきている(と感じている)病気の一つに今回ご紹介する
非結核性抗酸菌症があります。以前は非定型抗酸菌症とか言われていましたが、チョットわかりずらいので最近は非結核性こ抗酸菌症と呼ばれる頻度が増しています。
なにがワカリズライか?誤解の理由は「抗酸菌」とか「結核」という言葉にあるかと思います。
「非定型」って、定型なのはじゃあなに?→定型な抗酸菌感染症は「結核」のことをさしております。
ただ、なんとなく、「結核」のニオイがまだするため、じゃあ「非」をつけて「結核」にあらずとすれば、誤解が解けるんじゃない?とでも思ったのか「非結核性抗酸菌症」となりましたが、逆に「結核」という言葉が入っているため妙に不安や心配を感じられる方々もいらっしゃいます。
この、名前だけでもいろいろと複雑な「非結核性抗酸菌症」ですが、実は、「抗酸菌」という仲間の菌による感染症で、その内実は千差万別です。
多種類ある「抗酸菌」の仲間の感染症を、「お前ら全部にているから『非結核性抗酸菌症』にしとくから」といわれて命名された病気のため、原因菌は非常に多彩です。
なので、「非結核性抗酸菌症」といわれましたが、どうすればいいのでしょうか?
という質問をされても、医師の立場としては、どの「抗酸菌」ですか?という点がわからないと答えようがない質問となります。
とはいえ、「非結核性抗酸菌症」は日本では”MAC"と言われる菌種によるものが非常に多いため、
一部の方々の認識としては「非結核性抗酸菌症」≒MAC
とされている場合もあるかもしれません。
この”MAC”と呼ばれる抗酸菌も、実は2種類の菌をまとめてMACと読んでいます。
またまた、複雑にするヨウ素が増えて、ホントウにヤッカイな病気です。
MACはMycobacterium aviumとMycobacterium intracellulareという菌の2種類からなっています。
この、メジャー2菌種は、お住まいの地域で実は大体推定できるという、不思議な状況となっています。
私どもの病院のある「東日本」の地域では”Mycobacterium avium”が原因となることが多く、西日本では”Mycobacterium intracellulare"が原因菌となることが多いことがわかっております。
では「なぜ」このような分布状況になっているのか?ブログ作者は不勉強でしりません。どなたかご存知の方いらっしゃいましたらご教授ください。
具体的な診断や治療方法については、「日本結核病学会」が平成20年4月に
肺非結核性抗酸菌症診断に関する指針-2008年
を出されています。アメリカの学会(ATS、IDSA)の、肺非結核性抗酸菌症に関するガイドラインを参考に、日本向けにアレンジして作成されております。ただ本文章は、呼吸器や感染症に従事する専門家向けに作成されていますので、一般の方々にはチョット難しいかもしれません。
診断は、長引く咳や喀痰の症状がある人や、検診胸部レントゲンで「カゲ」があると指摘された人などで、胸部CT画像所見から、「非結核性抗酸菌症」が疑われた場合に、「痰」や「気管支鏡検査」などで原因となる「抗酸菌」の細菌検査を行い診断確定していきます。
診断が確定されたら、治療治療については、「専門の医療機関」での診療がなされる必要があります。
1年前までは、なんと「健康保険」が適応される薬剤がなかった「非結核性抗酸菌症」。
現在では、ちゃんと保険適応の治療薬がありますが、それでも、3種類以上の薬剤を併用してしかも、6ヶ月~2年場合によってはそれ以上の期間内服しなければいけない結構、大変な病気です。
また、細菌は「後天性免疫不全症候群」(AIDS)が基礎疾患にある方々で、「非結核性抗酸菌」が血液のなかに現れるような状態となる人がいます。非常に重症の免疫不全状態の方々に生じる病態で、適切な治療がなされないと、命にかかわる病気と考えられます。(因みに、免疫状態が正常な方の非結核性抗酸菌症はすぐにどうこうということはめったにありません。(例外はもちろんありますが))
なかなか、理解が難しい「非結核性抗酸菌症」。さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ読者の皆様には、こんな病気もあるんだなあということは覚えていただきたいと思います。
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